管理している建物の防火管理や火災事故の予防のために必要である消防立入検査。
消防立入検査は、消防法という防火・防災についてを記した法律によって義務付けられているものです。
消防立入検査は、対象の建築物やテナントが消防法に基づいて防火レベルを満たしているか調べるものです。正当な理由なく検査自体を拒否したり検査後の報告を怠ることはできず、拒否や違反をした場合は処罰の対象になってしまいます。
とはいえ立入検査はあらかじめ通知が来るので、焦らず対処できるものです。
本記事では、消防立入検査において理解しておくべき部分と検査の行われ方について解説しています。建物の管理者様や管理会社様は必見です!
消防立入検査とは?頻度や抜き打ちも解説
消防立入検査の意味合いや検査をするに適切な頻度について解説しています。
消防立入検査と検査のサイクルについては、地域や自治体によって差があります。消防法では火災事故を未然に防ぐことや防火管理システムの維持を目的として、消防立入検査を義務化しています。
正しい知識をもっておくことで、実際の消防立入検査でも問題なくできるでしょう。
消防立入検査とは消防法に基づいた調査
まず、消防法について簡単に解説します。
消防法とは、火災の予防・警戒・鎮圧などを目的とした、消防上必要な規則を定めた法律のことです。消防法の対象となるのは、消火設備や警報設備を有した施設、または避難設備です。消防法ではそうした施設から火災事故を発生させない又は事前に防げるよう、建物の安全基準や周辺住民の安全を保証する目的が込められています。
一般市民だけでなく対象の施設で働く職員の安全を守るための法律が消防法ならば、消防法に則り“基準を満たすように”施設は運営をしていく必要があります。その“基準を満たす”項目と呼ぶべき検査こそが、消防立入検査です。
消防立入検査では対象となる『建物』を、管轄区域の『消防職員』が実際に施設を訪れ、建物全体や建物内の設備が消防法で定められている基準を満たしているかを検査することです。
実際の検査では、主に以下のような事項が確認されます。
消火器などの消火設備の配置確認
避難経路の近くに物が置かれていないか
避難経路に十分な幅が取られているか
消防関連の書類が揃っているか
つまり消防立入検査では、対象となる建物の“防火対策や災害時に使用する備品が基準を満たしているか”を厳しくチェックされるのです。
消防立入検査が行われる頻度
消防立入検査のサイクルは1年に1回の地域もあれば5年に1回だけというように、検査の頻度は自治体や地域ごとに異なります。
例として、下記のような頻度で行われます。
建物の面積や防火設備の点検報告状況によって頻度が異なる『ポイント制』を導入 点数が高い(危険度がある)→1年に1回 点数が低い(危険度は低い)→3〜4年に1回 |
消防庁が定める規定により1年に1回の点検 |
1〜3年または5年に1回以上の実施 |
また自治体が定めている基準の他にも、検査のスパンが変わってくるポイントがあります。
過去に火災事故が発生した周辺地域の建物
繁華街などの飲食店が密集した地域の建物
消防点検・報告を何年も怠っている建物
上記はあくまで一例ですが、このような事案が組み合わさることで、立入検査の頻度が自治体や地域ごとで変わるのです。自分が管理している建物の対象地域を調べ、基準を満たした運営ができるように日頃から安全意識を高めていきましょう。
いずれにせよ施設で働く職員や周辺地域の人々を火災事故から守る意味でも、立入検査は重要な意味をもっています。
消防立入検査の抜き打ちの可能性が高いケース
実は消防法の中で立入検査については、時期や時間帯などの詳細な規定がされていないので、抜き打ち検査の可能性もあります。
本来は消防署からあらかじめ検査を知らせる通知が来てから、2週間以内に消防立入検査が執り行われます。
反対に抜き打ち検査の可能性があるとすれば、事前に連絡が繋がらなかったり、消防法で定める規定違反の可能性があったりする場合です。
抜き打ち検査がある理由として、消防法令違反を犯さないようにする目的や、立入検査の結果を報告しない例が過去に発覚していることにあります。
2002年までは立入検査をする48時間以前の通告が消防署に義務付けられていました。しかし現在では事前通告なしで全ての時間帯において立入検査ができるようになっています。
また立入検査の改修や報告を怠ると、罰則を受けることがあります。内容によって罰則は異なりますが、30万円以下の罰金または拘留が科せられます。
消防立入検査は防火対象物から管理している建物や、周辺の人々を守る大切なものです。正当な理由なく拒否することはできないうえに、拒否すると抜き打ち検査の可能性があることを覚えておきましょう。
消防立入検査までの流れや対応方法
ここでは、消防立入検査が始まる事前段階から実際の立入検査が行われる当日の様子について解説しています。
消防立入検査は、対象となる建物だけでなく、そこで働く職員や周辺地域に住む人々の安全確保のためにも大切な検査です。
事前にどんな内容の検査なのかを知っておくことで、立入検査の当日に焦ることはないでしょう。
①消防署から事前通知が来る
消防立入検査が行われる対象のテナントまたは建物に対して、検査を知らせる通知が先に来ます。事前通知から立入検査の当日までは数日(およそ2週間前後)の猶予があるので、その間に検査を行う日程や範囲などの打ち合わせを行います。
消防立入検査はテナントまたは建物と、その管理者が“防火に関する備えや知識”が基準を満たしているか確認する検査です。そのため、検査内容は消防法の規定を元に則り実施されます。
②立入検査が実施される
対象の建物がある管轄の消防職員およそ2名が実際に建物を訪れ、実際に検査が開始されます。検査をする際には出動要請が発生することを想定し、消防車両で立入検査の現場へ訪れます。
当日は検査の対象である建物全体や共用部分、必要であればテナント内部まで検査します。検査の際には、オーナーなどの防火管理者は現場に立ち会わなければなりません。
また火災事故が発生した時を想定して、ポンプ車とスプリンクラーを接続した放水試験をする時もあります。建物の大きさや現場にいる消防職員の判断によって検査内容は多少変わることを頭に入れておきましょう。
ちなみに過去に検査報告を偽ったり怠ったりした例があることから、現在では報告義務が付けられているだけでなく全ての時間帯で立入検査が可能になりました。ですが管理者や近隣住民の迷惑になることが懸念されることから、日中に検査が執り行われることがほとんどとなっています。
消防立入検査の前には、事前に通知が来ることが分かりました。ですが過去に消防立入検査の報告をしなかった事例があることから、現在では抜き打ちでの検査が可能になっていることも事実です。
基本は事前通知が来てから準備を進めていけば良いですが、日頃から火災事故への対策を講じておくことで、未然に防げることもあるはずです。
消防立入検査が行われた後の流れや対応方法
消防立入検査が終わった後の取り決めについて解説していきます。
検査が終わっても、すぐに一安心できる訳ではありません。
最後までやるべきことをしなければ、次回の立入検査の際に抜き打ちチェックをされてしまうかもしれません。
流れや対応はシンプルなことなので、ポイントを押さえておくことで問題なくできることでしょう。
①立入検査結果通知書が届く
実際に消防立入検査が終わって検査結果に明らかな問題がない場合は、通常1週間以内に『立入検査結果通知書』が届きます。
立入検査そのものは前もって通知が来るので、検査の前までに消防を目的とする器具や設備の確認をすることで、立入検査をクリアすることができます。
しかし建物内の消防用設備に不具合があったり、非常時の避難経路が確保できていなかったりなどの問題がある場合は、検査自体が再検査になります。
立入検査の前にはあらかじめ通知が来るので、事前通知から検査当日までの間で防火設備の動作確認をするなどの対応をしておくと安心です。事前に準備をすることで再検査を回避できるので、日頃から定期的なチェックを怠らないこともポイントの一つです。
再検査になった場合、ほとんどの場合が修正箇所の写真提出で済むことが多いです。だからといって「写真を撮って、再提出して、終わり」という流れ作業の気持ちでは、火災事故に対する意識は高まりません。
取り返しのつかないことにならないように、立入検査結果は真摯に受け止めるようにしましょう。
②消防に改修(計画)報告書を提出する
消防立入検査の総括は、対象となる建物の管轄の消防署または出張所へ改修報告書を提出することです。報告する人物は対象の建物の管理者で、2週間を目安に管轄の消防署長へ提出と報告をします。
消防署が行った立入検査の結果を元に、“何がダメで、その問題をどう改修したか”を記載するのが、改修報告書の役割です。
地域ごとに異なりますが、申請や提出には
電子申請
窓口で直接提出
郵便などで提出
の3パターンがあります。
また個人で報告書を記入する他に、専門機関に委ねて記入→報告書を提出するやり方もあります。「なかなか時間が取れない」「専門的な知識が無いため、記入が難しい」などの場合は、改修報告書の記入を外注することも可能だということを覚えておきましょう。
消防立入検査は対象となる建物の安全や防火設備の異常が無いか調べる目的です。そのため、検査が終わったら即終了ということはなく、対象地域の消防署へ報告書を提出する義務があります。
安全意識や防火対策、防火設備の点検などは、立入検査の時だけ意識するのではなく日頃から関心をもっておくようにしましょう。
また、検査が終わったら“報告するまで”が立入検査という一連の流れを覚えておくことで、より消防立入検査の流れを理解できるようになるはずです。
消防立入検査の点検制度とチェック項目
建物の安全や火災事故を未然に防ぐ意味合いでも重要な消防立入検査。そんな検査の点検制度と主なチェック項目について解説しています。
消防用設備点検
消防用設備とは、消火栓設備や消火器、スプリンクラー設備などの防災設備の総称です。
消防用設備は火災事故が発生した時に稼働する設備ですが、消防用設備点検とは、火災事故時にそうした設備が正常に稼働するかを点検することです。
具体的には「消防用設備は適切に配置されているか?」「避難経路の確保と動線は正しいか?」「防火管理者の選任と消防計画の作成・消防訓練の実施報告は済ませているか?」などの点検項目があります。
消防用設備点検の前には設備の不具合が無いかを確認し、立入検査に向けて備えておくと安心でしょう。
防火対象物点検
防火対象物とは、消防法で定められている劇場や遊技場、百貨店、図書館、工場などの『火災予防行政』の主たる対象となるものです。
建物ごとの収容規模や構造により、防火対象物延滞での点検報告が義務付けられています。また建物全体の大きさや用途によって点検費用は異なるので、管轄の消防署へ事前に確認するのも良いでしょう。
防火対象物点検も、消防立入検査の中に組み込まれているので同時に点検をすることが可能です。年に1回は点検を行い、結果を管轄の消防署長へ提出と報告をする必要があります。
防火対象物点検の基準を満たした建物は、『防火基準点検済証』を表示することができ、防火基準を満たした安全な建物であると証明できます。さらに点検結果が3年間連続で基準を満たしている場合、以後3年間の点検と報告義務の免除が可能です。そのためには特例申請をする必要がありますが、申請が認められると『防火優良認定証』を掲げることができます。
消防立入検査で重点的にチェックされる項目
消防立入検査で重点的に確認されるのは、主に以下の4点です。
消火設備の状況→消防の時に使う設備。消化器や避難はしごなど
警報設備の状況→緊急時に周囲の人へ危険を知らせる装置。自動火災報知器や非常放送設備など
消火用施設の状況→火災発生時に消防隊による消火活動に用いられる施設。排煙設備、連結散水設備など
防火管理の状況→火災の発生を未然に防止すること。『自分たちのことは、自分たちで守る』という主訴
上記以外にも詳細にチェック項目はあるのですが、「大変そうだ」と感じる人もいるのではないでしょうか?検査前に一気に全ての基準を満たそうと準備をしても大変なのです。
したがって、日頃から火災事故や防火対策について関心をもつことで不慮の事故を防げるようになったり検査時に大変な思いをしたりすることが少なくなるでしょう。
消防立入検査を行う事前の準備段階や検査当日だけ意識していては、火災事故が発生した時に危険が伴います。日頃から防火や消火設備に気を向けておくだけでも、検査の時に大変な思いをすることが少なくなることでしょう。
消防立入検査後に不備を改善しなかった場合はどうなる?
消防立入検査の時には消火器の動作不良を指摘されたり、非常時における通路の幅の確保ができていなかったりなどの問題が、予期せぬ形で発覚することもあるでしょう。
不備があっても改修すれば問題はないのですが、問題をそのまま放置していると処罰の対象になることがあります。
立入検査が終わってから消防署へ報告書を提出しただけでは、抱えている問題が改善されません。以下のポイントを押さえ、きちんと不備を改善することで処罰を受けることはなくなります。
①該当の建物の情報が公示される
問題があっても改善をしなかった場合、警告→命令→公示の順に段階をふんでいき、だんだん重さが加わっていきます。
ちなみに公示とは、対象となる建物の利用者や周囲の住民に対して「この建物事態が消防法に違反していて、火災予防の観点において危険な建物ですよ」という趣旨の情報を知らせることです。
情報を知らせるだけでなく、建物の出入り口に消防法における違反内容が掲示されたり、対象の市町村ホームページに公開されてしまいます。
消防法違反をしているという危険性が、社会全体に知られることで、建物自体のイメージダウンやバッシングに繋がっていくのです。
問題はそのままにしておいても良いことはないので、すぐ改善するようにしましょう。
②罰則を受ける可能性もある
消防署からの命令が来ても従わない場合処罰の対象になる恐れがあり、建物を管理しているオーナーが罰則を受けることになります。
罰則内容は命令の内容により異なるので、罰則を受ける前に注意が必要です。
例① 点検やメンテナンスを行わなかった場合→30万円以下の罰金または拘留 |
例② 消防用設備の未設置または不具合のまま放置した場合→1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
例③ 管理している建物が法人の場合→1億円以下の罰金刑 |
これらはあくまで一例に過ぎません。
何よりもきちんと報告をしていれば、このような罰則は発生しないので、速やかに対処するようにしましょう。
消防立入検査の時に万が一にも不備や不具合が発覚したとしても、きちんと改修して報告をすれば問題はありません。
「不具合があるのに改修と報告を怠る」ことが一番の問題です。公示されたり処罰されたりした後では、信用回復は難しくなるでしょう。
初めからきちんと対応することで、問題なく検査後の改修が可能になります。
消防立入検査で慌てないための2つのポイントとは?
ここでは立入検査の時に慌てないためのポイントを2つご紹介します。
日頃から意識できるポイントなので、ぜひ参考にしてください。
ポイント①日頃の防火管理が大切
消防立入検査で確認されることは、全てにおいて『防火の項目が基準を満たしているか』です。すなわち建物の利用者やそこで働く職員を、火災事故から守るためのものです。
正しい防火知識と防火管理を日頃から会得しておくことで、万が一の時にも対処できるようになります。
起きてからでは遅い火災事故ですが、日頃からの防火管理が整っていれば建物そのものや財産、人命を守ることが可能になります。
ポイント②テナントが消防法を遵守しているか確認しておく
消防法とは火災事故の予防や被害を抑える目的があります。消防法を遵守することで、建物自体の安全や仮に火災事故が発生した時にも、対応できるようになるでしょう。
ですがそもそも対象となる建物やテナントが消防法を守っていなければ、消防立入検査の時に消防職員に指摘されてしまいます。
あらかじめ建物が消防法を遵守しているか確認しておくことで、検査の時にスマートに対応できるだけでなく防火管理を整えることが可能です。
消防立入点検の時に問題が発生しないようにするためには、日頃からできることを意識しておくことです。
いつ発生するか予測ができない火災事故に備えておくことは大切です。防火対策は消防立入検査の時だけに限定するよりも、不測の事態に備えておける体制を整えておくことで、問題なく建物を管理することができるでしょう。
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いかがでしたか?
消防立入検査は、防火管理のために必要な検査で、自治体により頻度が異なります。
いずれも消防法により義務化されており、建物の安全や周辺住民の安全を守るためにも、立入検査は必要です。
また検査後には報告と不備があった場合の改修をする必要があります。これを怠ると罰則を受ける場合もあるので、きちんと立入検査の流れと報告をできるようにしましょう。
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